日本経済の状況と予測
                                                          2008 2/25


                    1. 日本国の経済状況(1)
                    2. 日本国の経済状況(2)
                    3. イスラエルのビジネス
                    4. 預言とみことばによる予測



       1. 日本国の経済状況(1)


  現在、神様は日本を揺り動かしている。戦後、資源を持たない日本の唯一の強みだった”経済”が揺り動かされているのである。


  昨今の日本の状況は、グローバル化された経済環境の中で かつての経済大国の面影は薄れ、(・・・ 経済のみならずさまざまな面でも)”二流国”に落ちている。グローバリズムは暴走する危険がいつもあり、原油価格高騰にあっても、”金余り”によって行き場がなくなった投機的資金が原油に集まったため起きている。資本が国境を越えて移動するグローバル資本主義は、投資機会を与え”金余り”を打開するが、その資金は何らかの投資対象に殺到してバブルを発生させる。そしてバブルは必ず崩壊し、このようなグローバル化の過程で大企業と中小企業の所得格差が広がっていく。
  一方、原油などの資源国はナショナリズムの傾向を現し始め、世界全体の景気後退に影響を与えている。
  (グローバリズム vs.ナショナリズム)



  (1) 今年に入ってからの状況:

  07−08年、景気回復といっても、原油、穀物などの値上がりによる物価上昇、株価下落、賃金の伸び悩みのため、一般国民にとっては全くその実感がない。(さらに、”低所得現象”という、価値観の多様化による(?)、05年・年収が200万円未満の世帯が全体の20%という現象がある。)
  欧米では、景気停滞とインフレが同時に起こる”スタグフレーション”の懸念がある。


  07年の大手企業業績の好調は、海外事業によるもので、国内需要によるものではない。さらに、頼みの海外事業による分も、米国サブプライムローン問題原油高円高が進み、外国人投資家が高成長を続ける中国などのアジア市場に投資先を移していること、また、そのため、08年の初めに株価が急落し、多くの上場企業で、07年4−12月期決算が過去最高を記録したにもかかわらず、08年3月期の業績予想を下方修正している。

  ・ 07年の企業業績を引き上げていた輸出産業は、新興国(中国など)の需要拡大によるものである。(トヨタ自動車(営業利益): アジア・倍増、中南米など・81%増)、海運業5社: 92%増)
  ところが、原油とナフサの価格の急上昇(年明けの米国原油先物相場:1バレル100ドル台)、および、円高(1ドル108円台)により、石油・化学、電気・ガスなどの業界は国内への価格転嫁が間に合わず、また、輸出産業は、大幅な円高(115円→110円以下)により、それぞれ業績を大幅に下方修正した。
  ・ ブラジルからの鉄鉱石の大幅値上がり(65%、08年度 2/18)も、国内の鉄鋼業界は5000億円近いコスト負担増になり、自動車用鋼板など逐次価格転嫁されていく予定である。

  ・ サブプライム問題による米国の景気後退を懸念して、住宅建材のサッシ、レジャー向けの二輪車、一般向け自動車などの輸出産業に大打撃を与えている。サブプライム問題は中国などの新興国にも広がるとみられ、今後も日本企業の経済成長がこれらの新興国に依存する傾向がさらに強まるため、ますます業績の先行きは不透明となりそうである。

  ・ 改正建築基準法の施行に伴う混乱により、07年国内新設住宅の着工戸数は40年ぶりに110万戸以下で、建設26社の07年4−12月期の経常利益は11%減った。

  ・ 大企業の多くは内需の弱さを海外の収益で補ってきたが、中小・零細企業は、07年不況型倒産(販売不振など)が増えた。(06年比で22%増、8445件) 原油高、規制強化が、中小・零細企業の経営環境を悪化させている。
  原油高(運送業者359件、06年の+63件)、材料費UP(洋菓子業界・・・小麦・乳製品価格上昇)など。建築基準法改正に伴う着工の遅れが原因の不況で”官製不況”とも呼ばれている。(建設業者2039件、06年の+333件)

  ・ パチンコ業界は、風俗営業法改正で、賭博性の高いパチンコ台を入れ替える必要からの設備投資がかさみ、また、貸金業法の改正で、消費者金融からの借り入れが困難になりパチンコ店利用者が減ったことも一因となり、倒産96件(06年の+26件)だった。(これも事前に通達せず急に改正したことによる、公安委員会責任の”官製不況”であろう。)

  ・ 中国の人件費は上昇が著しく(07年は2000年のほぼ倍、06年の各省で2−3万元/月、北京、上海では4.6−4.8万元/月)、また、開発区における優遇税率廃止により、特に、繊維・アパレル業界などの労働集約型産業は人件費の安い内陸部や国外(ベトナム、ミャンマー)へ移動せざるを得なく、日本企業は戦略見直しが迫られている。

  ・ 中国向けの携帯電話の販売は、韓国、中国の強引なやり方に押され、(日本流の営業をしていた)日本のメーカー各社はすべて撤退した。



  (2) ケインズの経済理論による分析:

  企業が生産を行い全家計に分配し、全家計は所得の半分を”消費”に使い、残りの半分を預金や株式投資の形で”貯蓄”するとする。このままでは、生産に対する需要が貯蓄分だけ不足する。しかし、企業による生産への投資があるため、売れ残りも品不足もなく経済は安定する。

           消費 + 投資 = 需要  =  生産   ・・・・  (安定)

  しかし、投資が貯蓄よりも少ないならば、資金市場ではその差分の”金余り”が生じる。すると、需要(=消費+投資)は生産よりも少なくなり、”売れ残り”が出る。この金余りの時には、金利を下げ、投資を刺激する。それでも投資の増加が不十分であれば、企業は生産を縮小するので、経済は”不況”になる。すなわち、
           ・・・・  ”金余り”が”不況”を生む (*)

  ex) 過去の実例として、1973年の第一次石油危機の時、石油価格の高騰は輸入国の所得を奪い、それが輸出国に引き渡される。ところが輸出国は中東の砂漠の国で、消費も投資対象も乏しい。このため世界的な”金余り”が生じ、世界的に不況圧力を及ぼした。

  今回は、原油価格が1バレル100ドルに達した現在であるが、石油輸出国中東のみならずロシアが加わり、また、新興工業国(中国、インド、ブラジルなど)でも”金余り”が発生しているので、問題はさらに深刻である。
  新興工業国では大変な格差社会であり、所得の一部が富裕層にのみ行き渡るため、全体の所得のほとんどは貯蓄に回される。それらの国内への投資についても、インフラ未整備、環境破壊、投資環境の未整備などさまざまな障害がある。したがって投資の伸びが貯蓄の伸びに追いつかず”金余り”が生じている。

  米国では、家計貯蓄がマイナスになるほどの旺盛な消費拡大が見られた。しかし、住宅バブルが崩壊し、サブプライムといわれる住宅ローンの不払いが増え、金融機関の経営を圧迫している。市場規模が米国の1/10の中国ではこの代役が勤まらない
  株価下落や円高など、日本経済もすでにサブプライム問題の影響が及んでいる。07年は、外需(輸出)は好調だったが、内需が不振だったので、経済成長率は1%台に終わった。08年は、その頼みの外需が大幅に落ち込む見込みである。
  景気が後退した場合、財政・金融の刺激策を打ち出すのであるが、現在の政策金利(現在0.5%)はあと0.5%しか下げられない。
      ・・・・   (by.竹森 俊平・慶大教授、○売新聞・08 1/28)

   * 富を十分持っていながらそれを使わないのは罪悪(ルカ19:12−)



  (3) 資源・食糧の供給不安:

  原油、LNG(液化天然ガス)は、価格の高騰のみならず、その供給国からの調達量が激減する予定になっている。
  特に、世界的なエネルギー不足と高騰により、自国向けを優先するように方針を転換したインドネシア(ボンタン)は、LNGの対日輸出量を、2010年に現在の1/4以下(1200万トン/年→200−300万トン/年)にすることが確実となった。(LNG”2010年問題”といわれる) 2009年からにずれ込んだサハリン2は、ロシアの圧力で出資比率が大幅に下げられ(サハリン1は中国向けに変更されかけている。)、オーストラリア(ゴーゴン、420万トン/年)も、2012年からの輸出に変更されることが確実になった。そこで、その期間を埋め合わせるため、新日本石油(東南アジア3ヶ所権益獲得済み)、伊藤忠商事(イギリス北部の海上開発予定)などの日本企業は、調達先開発に奔走している。
  06年初めにロシアがウクライナ向けの天然ガス供給を停止するなど、資源国が資源の国家管理を強め、外資を排除する”資源ナショナリズム”に対しては、かつて石油市場を牛耳っていた国際石油資本ロックフェラー系、ロスチャイルド系などの欧米メジャー)も打つ手がない。また、07年12月には、OPECも価格の下落を嫌い 原油の増産を見送った。


  レアメタルは、ハイテク製品(ハイブリッド車モーター用の磁石、自動車排気ガス用触媒、TV用液晶パネルの電極、電子機器のメッキ・配線、リチウム電池など)を作るのに必要不可欠であるが、日本はそのほぼ全量を輸入に頼っている。その重要性の割に政府としての戦略的な取り組みに欠け、今まで調達は民間任せであった。レアメタルの産出は特定国に偏っている。(中国:レアアース06年生産量98%、インジウム63%、タングステン85%、 南アフリカ:プラチナ77%、マンガン20%、他 ロシア、インドなど) それに乗じて価格が高騰し、2007年5月では(2002年と比べ)インジウム8.4倍、ニッケル8.0倍、ネオジム6.0倍、タングステン4.7倍などとなっている。政府はもっと資源外交に力を入れるべきである。(カザフスタン(ウラン・(済))、中央アジア、中南米、ミャンマー; アフリカへの政府開発援助(ODA)について3年間で倍増する計画を 鉱山開発に振り替える、など)
  中長期的には、ハイテク製品から回収しリサイクルする技術や代替材料の開発が課題となっている。物材研(つくば)の計算によると、国内の家電に含まれているレアメタルの”埋蔵量”(都市鉱山)は、金:6800トン(世界の埋蔵量の16%)、銀:6万トン(23%)、インジウム:1700トン(61%)にもなるという。(・・・実際に回収するのは難しいと考えられる)
  中国はアフリカ西部のマンガン鉱山の権益の51%取得(08 2/15)し、石油だけでなくレアメタル獲得にも躍起になっている。


  日本の食糧自給率は先進国最低の39%(2006年度、カロリーベース)であり、地球温暖化による不作、バイオエタノールへの転換やヨーロッパにおける魚食ブームなど、国際的な食糧の争奪戦はますます激しくなっている。また、中国製ギョーザ中毒事件など海外任せの”食の安全”も懸念される。  (自給率: ドイツ84%、イギリス70%、フランス122%、アメリカ128%、オーストラリア237%)

  ・ オーストラリアでは、地球温暖化に伴う 3年続きの旱魃のため、日本向けの小麦(日本はオーストラリアから20%以上購入)の、(量は確保できたが、)日本政府の製粉業者への売り渡し価格が11.4%上昇(07年10月)し、さらに08年4月から30%値上げ(国際相場は60%も上がっている)する予定である。(小麦の輸入先は、アメリカ、カナダ、オーストラリア) この水不足は、アフリカなど世界各地に発生している。
  ・ 米政府が石油燃料の代替エネルギーとして、遺伝子組み替えの(作りやすく、価格が上がった)トウモロコシを原料としたバイオエタノールを製造開始したため、遺伝子組み替えでない食用のトウモロコシを作る農家が減り、輸入業者はその確保に苦労している。
  ・ 中国は、開発で農地が減り、13億の民を自国の食糧で養えなくなった。日本はその中国を、アメリカに次ぐ食糧輸入国としている。
  ・ フィンランドでは、過去の経験から 穀物の不作に備え1年分の種子を国家が備蓄している。
  ・ マグロは漁獲制限により高値になった。それに代わるカツオも、健康志向から魚食がブームになっているヨーロッパが、そのユーロ高を背景に購入し、日本は買い負けするようになった。
  ・ 食用油は、中国が食の洋食化に伴い 08年は消費量が日本を越える見込みであるが、中国の大豆の自給率は42%(03年)に過ぎない。三井物産はブラジルの農業法人に出資して、大豆などの農場経営に乗り出した。ただしブラジルは、アマゾンの低地を(主に中国向けの)大豆畑に大規模に開墾している(大豆輸出量2005年米国を上回る、ブラジルは大豆の20%中国へ輸出)ので、ジャングルが消え、地球環境・温暖化に悪影響を及ぼすことが心配されている。
  ・ 日本は、シンガポール、マレーシアの続いて、タイとも自由貿易協定(FTA)を柱とする経済連携協定(EPA)を結んだ。(07 11/1) 日タイ間の貿易額は06年に4.6兆円を超え(アジアで最大)、自動車部品、鉄鋼などの関税が廃止される予定で広い分野で貿易・投資が促進されそうである。日本からのリンゴ、柿、ナシ、桃など富裕層向け輸出が、すでに関税無しで本格化している。



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